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千葉地方裁判所 昭和62年(ワ)1150号 判決

主文

(甲事件)

一  被告は原告に対し別紙物件目録記載の建物を明渡せ。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

(乙事件)

一 原告らの請求を棄却する。

二 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  双方の求める裁判

(甲事件)

一  原告

主文同旨

二  被告

原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。

(乙事件)

一  原告ら

1 被告は原告小野都代に対し、訴外渡邊征太郎が別紙登記目録一記載の、及び訴外田中稔が同登記目録五記載の、各登記の各抹消登記手続をすることを承諾せよ。

2 被告は原告佐々木孝子に対し、訴外渡邊征太郎が別紙登記目録二記載の、及び訴外田中稔が同登記目録六記載の、各抹消登記手続をすることを承諾せよ。

3 訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文同旨

第二  双方の主張

(甲事件)

一  請求原因

1 原告は、昭和六二年六月二三日、競落により別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という)につき所有権を取得した。

2 被告は本件建物を占有している。

3 よつて、原告は被告に対し、本件建物の所有権に基づき、右建物の明渡しを求める。

二  答弁

請求原因事実は認める。

三  抗弁

1 被告は、昭和五三年四月本件建物を建築してこれを所有し、保存登記を経由した。

2 しかるに本件建物は渡邊征太郎のために昭和五四年一一月一六日売買を原因とする所有権移転登記が経由された。

3 右登記は不実の登記である。即ち、渡邊は、本件建物の権利証、被告の印鑑証明、委任状を悪用して、無断で渡邊の所有名義に移転登記を経由したものである。

4 そして渡邊は、株式会社住宅ローンサービスに対し本件建物につき担保権を設定したので、同社が担保権を実行した結果、原告が本件建物を競落したものであるから、右競売は無効である。

四  答弁

1 抗弁1、2は認める。

2 同3は否認する。

3 同4の事実は認めるが、本件競売が無効であることは争う。

五  再抗弁

被告の競売無効の主張は、民事執行法一八四条の「代金の納付による買受人の不動産の取得は、担保権の不存在又は消滅によつて妨げられない」との条項に反するものである。

六  答弁

民事執行法一八四条は、所有者が競売手続上利害関係人として処置された場合に限られ、真実の所有者を相手にして手続が進められていない場合には、適用がない。したがって、偽造文書、その他の事由で、真実所有権の移転がないのに移転登記がされ、外形的に新所有者になったものによって設定された抵当権によって競売手続が進められた場合、真実の所有者は買受人に対して所有権移転登記の抹消を求めることができる。

(乙事件)

一  請求原因

1 原告小野都代(旧姓佐々木)(以下たんに「都代」という)は、昭和五二年一〇月別紙物件目録記載の各土地(以下「本件各土地」又は「本件一、二の土地」という)を売買により取得し、同月二九日所有権移転登記を経由した。

2 原告佐々木孝子(以下たんに「孝子」という)は、昭和五三年四月別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という)を建築し、保存登記を経由した。

3 渡邊征太郎は、原告都代所有の本件各土地について、別紙登記目録一記載の所有権移転登記(以下「本件一の登記」という)を、原告孝子所有の本件建物について、同登記目録二記載の所有権移転登記(以下「本件二の登記」という)を各経由し、田中稔は原告都代所有の本件各土地について、別紙登記目録五記載の所有権移転登記(以下「本件五の登記」という)を、原告孝子所有の本件建物について同登記目録六記載の所有権移転登記(以下「本件六の登記」という)を各経由している。

4 被告は、昭和六二年六月二三日、本件各土地建物を競落(株式会社住宅ローンサービスが本件各土地建物に昭和五四年一一月一六日設定登記された別紙登記目録三、四記載の抵当権(以下「本件担保権」という)の実行によるもの)し、本件各土地について同登記目録七記載の所有権移転登記(以下「本件七の登記」という)が、本件建物について同登記目録八記載の所有権移転登記(以下「本件八の登記」という)が被害のために各経由された。

5 本件一、二の各登記は不実の登記である。即ち、渡邊は、本件各土地建物の権利証、原告らの印鑑証明、委任状を悪用して、無断で渡邊の所有名義に本件一、二の登記を経由したものである。そして渡邊は、株式会社住宅ローンサービスに対し本件各土地建物につき本件担保権を設定し、その後で田中の所有名義に本件五、六の登記を経由した。そして株式会社住宅ローンサービスが本件担保権を実行した結果、被告が本件各土地建物を競落し、被告の所有名義に本件七、八の登記を経由した。

したがって、渡邊の本件一、二の登記は無効の登記であり、また無権利者の渡邊から田中に対する本件五、六の登記も無効の登記であるから、原告らは、渡邊及び田中対し右各登記の抹消登記請求訴訟を提起し、同訴訟が当庁昭和六一年(ワ)第一四八九号事件として係属している。

したがって、被告は右の各抹消登記手続について承諾する義務がある。

6 よって、原告都代は被告に対し、渡邊が本件各土地について本件一の登記の、及び田中が本件各土地について本件五の登記の各抹消登記手続をすることを承諾すること、原告孝子は被告に対し、渡邊が本件建物について本件二の登記の、及び田中が本件建物について本件六の登記の各抹消登記手続をすることを承諾することを求める。

二  答弁

1 請求原因1ないし4は認める。

2 同5のうち渡邊の本件一、二の登記が不実の登記で無効であること、田中の本件五、六の登記が無効であることは否認し、被告に右各登記の抹消登記手続の承諾義務があることは争う。

三  抗弁

甲事件の主張五(再抗弁)を引用する。

四 答弁

甲事件の主張六(再抗弁の答弁)を引用する。

第三 証拠関係(省略)

別紙

物件目録

一 所在 千葉市花園町

地番 四一番三一

地目 宅地

地積 一三二・三九平方メートル

二 所在 右同所

地番 一五五六番二

地目 宅地

地積 二三・一四平方メートル

三 所在 千葉市花園町四一番地三一、一五五六番地二

家屋番号 四一番三一

種類 居宅

構 造 木造瓦葺二階建

床面積 一階 六〇・五九平方メートル

二階 三四・三六平方メートル

別紙

登記目録

一 別紙物件目録一、二記載の土地についての、昭和五四年一一月一六日受付第四三二六三号所有権移転登記

二 別紙物件目録三記載の建物についての、昭和五四年一一月一六日受付第四三二六四号所有権移転登記

三 別紙物件目録一、二記載の土地についての、昭和五四年一一月一六日受付第四三二六六号抵当権設定登記

四 別紙物件目録三記載の建物についての、昭和五四年一一月一六日受付第四三二六六号抵当権設定登記

五 別紙物件目録一、二記載の土地についての、昭和五八年九月一四日受付第三一三八五号所有権移転登記

六 別紙物件目録三記載の建物についての、昭和五八年九月一四日受付第三一三八五号所有権移転登記

七 別紙物件目録一、二記載の土地についての、昭和六二年六月二九日受付第二五九五二号所有権移転登記

八 別紙物件目録三記載の建物についての、昭和六二年六月二九日受付第二五九五二号所有権移転登記

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